カニ解禁11月のフルコース〜認知症を超えた魂の記憶!

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前回の記事では、丹後の海岸で偶然にも出会ったペンションで
マリンジェットに乗った話、

 

そしてそのペンションのオーナーが経営するカニのお店で、
世界一のカニを選ぶ衝撃的な戦略に触れた話をしました。

 

今回はそのペンションでカニを実際に堪能した進撃の思考です。

 

 

母の古希祝いは、世界一のカニを食べて温泉につかること

 

カニとマリンジェットのステキなペンションに出会った年、
ちょうど、その秋、私の母は70歳になりました。

 

これまで、母に何もしてあげられなかった。
父が亡くなって以来、母は、苦労を重ねてきました。
せめて古希のお祝いは、このカニのペンションで、
一生忘れられない思い出を作りたいと思い、

 

カニ解禁の11月になってからスタートする、カニのフルコースの宿泊プランを計画しました。

 

 

今思うと、これが母と行った最後の旅行になりました。

 

 

その次の年は認知症が進行し、フラフラ歩いていたら車にはねられ、
病院と施設で過ごすことになり、今に至っています。

 

だから思います。

 

いつかやろう」ではなく、「いまやる」ことの大切さ。

 

 

あのとき思い切って、母と一緒にカニのフルコースを食べてよかったと思います。
認知症が相当進んだいまも、母の心のなかであの思い出は色あせていません。

 

ハイカラなペンションに感激

 

とうとう、
待ちに待った、あのペンションに宿泊する日がきました。

 

私と妻とで、一人暮らしの母を迎えに行き、
「お母ちゃん、お祝いに行くで!」

 

「どこに行くんかいな・・・」
もう、先日私が説明したことを忘れています。

 

思えばあの頃から認知症が進行していたんですね。

 

その日は、ちょうど、私の母が70歳を迎えたので
古希祝いを兼ねて、母も招待して、
あの世界一のカニを食べられるペンションに、私達夫婦と母の3人で泊まりに行く計画でした。

 

 

夕方、ペンションに着きました。

 

洋風の、ヨーロッパのリゾートのようなペンションからは
久美浜湾が一望に見えました。
私達に準備してくださった部屋は、2階の角部屋で、
大きな窓から海がワッと見えるきれいな部屋でした。

 

「ハイカラなとこやわあ!!
何十年ぶりかいな・・・」

 

と母の歓声!

 

それもそのはず。
母は、京都生まれの京都育ちで
若い頃は、オシャレで、
自分で「モガ(モダンガール)」と言っていたくらいなのですが、
父が教師を定年退職してから、田舎暮らしに憧れて、丹波の山村に移住したものの、
父の病気の悪化とその介護で、どこにも行けなくなり、
父が亡くなってからは一人暮らしで頑張って、
もう十何年も、山村で不便な暮らしをしていたのです。

 

初体験!カニのフルコース!

 

そして日が暮れるころ、
とうとう、待ちに待った、カニのフルコースタイムです!

 

オカリナで「ハッピーバースデー」を私が吹き、

 

順番にカニの料理が出てきました。

 

 

活きカニ

 

茹でガニ

 

焼きカニ

 

カニしゃぶ

 

カニさし

 

カニの甲羅のグラタン・・・・

 

 

これでもか、これでもかと

 

カニの新鮮さを生かした料理が出てきます。

 

 

 

食べごろにも焼き加減にもこだわりがあります。

 

オーナーは、
活きカニをしゃぶしゃぶにする時の、あげるタイミングなど
何も知らない私たちに丁寧に教えてくれました。

 

 

そして
このカニは、今日の御馳走のために
オーナーが目利きして選んできたものだとのこと。

 

 

津居山港に水揚げされたカニは
オーナーの目利きと選定で世界にたった一つのカニになり、
母の古希祝いの御馳走にのぼりました。

 

 

どんなことに着目して選んでいるのか
この日のカニを選んだ時は、どんな状況だったのか
そんな話をいっぱい聞かせてくださいました。

 

 

ああ、こういうわけで
津居山港に水揚げされるカニが

 

世界でたった一つの百万ドル以上の価値を持つにいたるわけか・・・
と納得できました。

 

 

もう、その世界一のカニが、ほっぺたが落ちて溶けるほどおいしくて、
私はキラキラお目目になって気絶したわけです…
もうほかのところではカニを食べにいけない(泣)

 

カニを味わいすぎて気絶した話

 

母を喜ばせようと計画した私が
自分がこの旨さにハマってしまって、気絶してしまった・・・

 

ホントに気絶したんですよ。

 

そのいきさつは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

カニ味噌のたっぷり入ったカニの甲羅の中に
この地の地酒「香住鶴」の熱燗を入れて飲む「甲羅酒」。

 

そう、
甲羅酒!!

 

 

これがたまらんのですわ。

 

何杯も香住鶴を注いで飲んでいるうちに
何が何だか分からなくなり、気絶してしまったという具合です。

 

 

でも気絶しながらも、私はオーナーとしっかり話をして
カニの知識を興味深く引き出したり、
気分が良くなってオカリナでクラシック曲を吹いていたそうです。

 

 

 

カニは一切余すところなくしゃぶり尽くせ

 

カニは、その1パイのすべてを余すところなく
味わいつくし、甲羅の隅々までしゃぶり尽くします。
そしてその旨さ、美味しさを何倍にも引き出すのです。

 

茹でカニの酢のもの、カニの刺身、しゃぶしゃぶ、
焼きガニ、そしてあくる朝に出てくるカニの雑炊や味噌汁まで

 

カニをふんだんに使います。
無駄なものは一切ありません。

 

かには状態によって美味しさが違う、

 

刺し身には刺し身の旨さが有り、
焼きガニには焼き加減に応じて何種類もの旨さが有り、
カニしゃぶには、引き上げる絶妙なタイミングで、身が花のように開く旨さがある。

 

そして
その美味しさを引き出す地酒やワインにこだわる、
一緒に味わう野菜や香の物にもこだわる。
その組み合わせや意味を理解して味わうと、

 

味わいの質が何十倍も高まります

 

喜びを届けたいという愛が世界一のカニをつくる

 

さらに、
オーナーの説明のわかりやすさ、そして誠実で優しい雰囲気、
主人公の母を盛り上げてくれる心配り、
これも、カニを美味しくしている大きな要素でした。

 

私が、オーナーから何回も聞いた言葉、

 

それは

 

「喜んでほしい。」
「喜んでもらえなかったら、どんな最高級のカニでも意味がない。」
ということでした。

 

 

そして、カニを選ぶ真剣なまなざしとは対照的に
カニの宿でカニを振舞ってくれるオーナーはとてもにこやかで、やさしく、

 

「おいしい」と私たちが言うと
目を糸のように細めて微笑んでいる顔がとても印象的でした。

 

 

 

オーナーが、真剣にカニを選ぶ根底には
「喜んでほしい」という切実な願い
カニを食べに来るお客さんへの、「愛情」があったのです。

 

母の涙

 

世界でたった一つの思い出を頂いた、母の古希祝い。
オーナーは、母のまえに自慢の一品を運びながら

 

満面の笑顔でこう言いました。

 

 

「お母さん、親孝行な息子さん夫婦で良かったですね。
この日が、忘れられない日になりますように、

 

最高のカニを食べてくださいよ。」

 

 

 

母の目から、うれし涙がポロポロこぼれました。

 

「おおきに、おおきに。
ほんまにこんなに親切にしてもろうて、

 

うちみたいなもんに、
こんなおいしいもんいただいて、
もったいない…もったいない・・・」

 

と言いましたところ、

 

 

オーナーは、カニの食べ方を説明しながら

 

「お母さんが今日泊まられることを思いながら、
この息子さんのお母さんはどんな顔をしているか、想像しながら
今朝仕入れてきたカニですよ。」

 

 

とおっしゃってました。

 

ここで、
「お母ちゃん、カニみたいな顔してるやん。」
と私はジョークを飛ばしましたがこれはスベりました。

 

母は何度も
「おおきに、おおきに」
と言って、涙ぐんで、ものすごく喜んでいました。

 

 

認知症が進行した今も、母はこの日のことを時々思い出してくれます。

 

世界一のカニをチョイスする根底にある思想とは

 

この、いまも心のなかで宝石になって光る思い出。
それを作り出した根底にあるものは何でしょう?

 

それは
「その人に喜んでほしい」
「かけがえのない、いい時間を届けたい」
そのオーナーの強い思いです。

 

オーナーのカニ選びのぬきんでた思考や戦略。
そしてそのカニをどのように提供するかという、知恵と創意工夫、
これを支え続けているのが、

 

「受け取った人に喜んでほしい。
その時だけじゃなくて、
ずっと心の宝にしてほしい」

 

そういう強い願いと思想です。

 

 

素晴らしい思い出は、認知症を超えて魂の記憶になる

 

ほんとうに、この日、母を連れていけてよかったと思います。
その後母は、認知症を患い、
いまでは、自分で身の名割のこともできず、コミュニケーションも難しくなりました。

 

あの日の思い出は
記憶がしっかりしていたころの最後の思い出になりましたが、
認知症状がひどくない時は
この楽しい思い出、世界一のカニを食べた思い出が
ふっとよみがえって、

 

「あの、ほれ、
うーん(しばらく、思い出そうと目をつむって)
カニいっぱい食べたん、美味しかったな」
と言ってくれる時もありました。

 

いまも、
私はもう自分の口から食事をできなくなった母を訪ねて、
「お母ちゃん、カニ美味しかったなあ」と手を握ると
握り返してくれます。

 

あの日いただいた、カニのフルコース
最高のプレゼントをいただきました。

 

「素晴らしい思い出を提供したら、
その人の心の宝になる。
その思い出は、認知症なんか超えて
魂の思い出になる。」

 

わたしはこう確信します。

 

 

 

 

 

 

今回の記事はカニのお話で終始しましたが、
次回の記事では、

 

この、カニのおはなしから得られた戦略的な気づき、
ライティングビジネスへの活用に掘り下げてみたいと思います。


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