構造化のフレームワーク〜「難しい」を見える化する3つの極意

構造化,フレームワーク,行動障害

私が社会福祉現場の支援で毎日使っている「構造化」のフレームワーク(考え方)。

 

これは、もし「ノウハウコレクター」と感じているなら、
脱出できるヒントになります。

 

もし、誰かにコンサルやコーチをしているなら、
より分かりやすい指導法のヒントになります。では!

 

 

この記事は、伝えたいことが多いので
目次を先に書きました。

 

 

 

社会福祉の支援現場で学んだこと

 

先日投稿した記事では、
「嵐の海では積荷を捨てない」という話をしました。

 

 

積荷を捨てすぎると重心が上がってしまい、
転覆する危険があるから、
正しくは、積み荷の位置を適切な位置に配置する。

 

だから、
もし「ノウハウコレクター」と言われていても、
ノウハウは捨てるのではなく、
ばらばらになっているノウハウの点と点を
メンターのアドバイスを受けながらつなげようというお話でした。

 

詳しくはこちらの記事に書いています。
      ↓
ノウハウコレクターよ知識を捨てるな!嵐の中で積荷は捨てない

 

こんどは、
船のお話とは話が変わりますが、

 

私は現在、船を降りて、
ソーシャルワーカーとして、
重い障がいのある人たちの支援をしています。

 

そこで学び今も実践していることに、
点と点をつなげるのに、ものすごく役に立つ内容があります。

 

 

発達障害や知的障害の人の辛さ

 

私が社会福祉士として関わっている人々の中には
重い障害を持っている人たちがいます。

 

中でも
車椅子を使っているわけでもなく、杖を使っているわけでもないので
一見したら障害があるのかどうか分からないんですが、
実は
自閉症スペクトラムなどの発達障害や知的障害などで、
自由に生活や行動ができない人々がいます。

 

ものの見え方、聞こえ方、感じ方が、独特であったり、
ものの順序が理解できなかったり、
理解の仕方が独特なので
普通は簡単なことでも、見通しが立たず、
一般社会にいたら、とてもつらい思いをしています。

 

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障害自体の辛さに加えて、
周りのことがわからない、
自分の状況をわかってもらえない。
だからものすごく辛いんです。

 

構造化,フレームワーク,行動障害

 

音楽の鳴るショッピングセンターで

 

例えば、
私はある日
「聴覚過敏」と言われる女の子を支援して、ショッピングセンターに行きましたが
そこでは
ホールでキャラクターショーをやっていて、
ブラスバンドのチームがアニメソングを演奏していました。

 

そしたら
「キャー!!」と叫んで耳をふさいで
ホールに倒れ込み
演奏が止むまで、彼女は顔を歪めて大声を出していました。

 

「大丈夫か、大丈夫か」

寄り添っている私のこともわからず、
手足をバタバタさせてのたうち回る様子は、
本当にパニックでした。

 

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実は彼女の中では、その音が
想像もつかない聞こえ方をしていて
それが怖くて、辛くて仕方なかったのです。
ただ「うるさい」から怒ったのではないのです。

 

「これぐらいの音で、なぜこんなに怒るんだろう」
と周囲の人は口々に言っていましたが、
違うんです。

 

本当に、その演奏が、恐ろしい音で聞こえていたのです。

 

 

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(例えば、
見えるものがすべて、こんなふうに、ハレーションを起こしていたら
目をつむらないと落ち着いていられないのもわかります。)

 

買い物に行けなかった男の子

 

例えばこんな事がありました。
おかあさんが、軽い自閉症の男の子に
「このお金で、夕方までにあそこのスーパーで夕飯の材料買って、
帰りに薬局で風邪薬を買ってきて」と5000円札を渡したら、

 

「はい、わかったよ」とその子はハキハキ返事して、
家を出ていって、
公園で遊んで、何も買わずに帰ってきそうです。
それで男の子を
「うそをつくんじゃありません」と叱ったそうですが、

 

実はその男の子は
言われたこと自体も、
その順番も、その見通しもわからなくて
理解できなくて、
とりあえず公園で遊んだら安心と思って
ひととおり遊んで
ニコニコして帰ってきたそうです。

 

自閉症の子供には実はこんな苦しみがある、
こんな「わからない」がある
ということをお母さんは知って、
それ以後、
自閉症の子供との接し方をしっかり理解して、
叱ったりせず、
小さなことでも褒めてあげるようにしています。

 

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その人独特の感じ方、理解の仕方がある

 

このように、
自閉症スペクトラムなどの障害のある人は
感じ方、ものの捉え方、
理解の仕方が、
とても個性的です。

 

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しかし、
世の中では「普通はわかるでしょ」と言われたり、
独特の感じ方や、物の理解の仕方があって、
その感じ方や理解の仕方によって取る行動が、
一見風変わりに見えます。

 

それで、
叱られたり、責められたり、
変わり者と言われてバカにされたり、
いじめられたりします。

 

わからない、
わかってもらえない、
よくわからないのに怖い顔をされる・・・

 

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そうしたらさらに混乱がひどくなり、

 

普通の人と違う行動や、パニック、大声などが頻繁に起こるようになる。
その人自身も、周りの家族も、暮らしにくくなる。

 

こうして
社会の中で自力で行動ができなくなる
「行動障害」につながっていきます。

 

これは
もともとの障害でなく、
人の対応によってもたらされる障害です。
この障害が、ある評価基準より激しくなると
「強度行動障害」につながります。

 

人の無理解な対応で起こる「二次受傷」

 

健康な人を中心に構成された社会は、
実にわかりにくくて、見通しが立たない。

 

発達障害などを背負った人は
それでさらに不安になり、傷つき、孤立していきます。

 

一番つらいのは本人です。

 

つらいから、
わからないから、
わかってもらえないから、

 

お店で大きな声を上げざるを得ない、
その場で寝っ転がってうつ伏せたり、
体を揺さぶったりして、

 

本人はその辛さに何とか対処しようとしている。

 

なのに、
専門知識も理解もない周りの人は、
普通ではない行動を見て、
それを責めたり、叱ったり、
クレームを言ったり、好奇の目で笑ったりする。

 

だから、もっと傷つく。

 

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障害のことだけではなく、
周りの反応や対応で傷つく。

 

これが「二次受傷」です。

 

「二次受傷」が重なって、
行動障害がもっと激しくなる。

 

こういうマイナスの体験が重なって、重なって
自分の身の回りのこともできなくなる
「強度行動障害」
になっていくんです。

 

 

こういう例を多く見ている中で、
私はなんて無力なんだろうと
しばしば思います。

 

 

どんなに障害が重くても、その人だけのすばらしさがある

 

このように、行動障害を背負った人は
周囲の出来事が分からない、見通しが立たない苦しみ、
そして自分の思いを伝えられない苦しみ、

 

その二つの苦しみを背負っています。

 

しかし、
障害があるからという理由で
すべてのことが禁止され、否定されたりしては絶対にいけません。

 

その人は、理解の仕方や表現の仕方が独特なだけであって、
そのもととなる「思い」や「気持ち」は健全とあり、
すばらしい、あたたかい心があります。

 

夢があり
希望があります。

 

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そして、
その人の思いが実現できるように支援していくことが
私たちソーシャルワーカーの役目です。

 

じゃあどのようにして支援しているのか。

 

その支援の方法は、その人その人で、様々ですが、
ここでは、「構造化」のフレームワーク(考え方)についてお話します。
なぜなら、この「構造化」の考え方は
福祉の支援現場だけでなく、
私達が取り組むあらゆる場面で、取り入れたら大きな力を発揮するからです。

 

もちろん、ライティングなどの在宅ビジネスにも大いに活用できるし、
もしあなたが、誰かを指導したり助言したりしているなら
その指導法にも大いに効力を発揮するでしょう。

 

複雑なことを「見える化」する「構造化」の考え方

 

福祉の支援現場で活用した「構造化」のフレームワーク

 

行動障害を持つ多くの人は、
二つ以上の複雑なことを理解できません。
見通しが立てられません。
だから、いくら普通に指示されても
わからず、
行動できず、
パニックになります。

 

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具体的に示してあげる

 

先程あげた
買い物に行けずに、公園で遊んだ男の子の例がそうです。

 

 

この場合、
行動を一つ一つ細かく分解します。

 

 

そして細かく分解された一つの要素には、
一つの目的のみに絞ります。

 

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たとえば、
「スーパーで夕食の材料を買って、帰りに薬局で風邪薬を買ってきて」
と言うのではなく、

 

「〇〇ストアというスーパーに行って。」
「そこで、トマトを買ってきて。」

 

つまり、
スーパーと言っても、どこのスーパーに行けばいいか悩まないように

 

具体的な場所を示してあげる。

 

夕食の材料というとわからないので
「トマト」と

 

具体的に教えてあげる。

 

 

風邪薬までは、難しいから、ここでストップ。

 

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こうしたら、その男の子は
トマトを買って帰ってきたかもしれません。

 

これが「構造化」の考え方(フレームワーク)の一例です。

 

問題は本人にあるのではなく、環境や支援のあり方にあった

 

こんなことがありました。

 

彼は自閉症の障害があるのですが、平日、
障害のある人が仕事をするための「作業所」に通っていました。

 

彼は
自宅から送迎車で作業所に到着して
一日そこで、作業したり、休憩したりします。

 

ところが、そこに行くのが辛くて
行くたびに、大声をあげたり、
体を揺らしたりクルクル回ったりして、なかなか作業に取りかかれませんでした。

 

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なぜだろう・・・・
いろいろ考えた末に、気づいたんですが、
その作業所は、これまでは、
休憩室と食堂と作業場所がごっちゃになっていたのです。

 

それで彼は、
どこで 何をしたらいいかわからなくて
不安になり、
毎日その不安がつらくて、体が固まったり、
逆に体をスイングさせて小節を歌って、辛さを紛らわせていたんです。

 

そのスイングの仕方や小唄の歌い方が「変」と感じるのでしょうか、
同じ作業所に通う仲間から笑われたり、茶化されたり。
そうしたら今度は彼は怒って、飲んでいるコーヒーカップを投げて割ります。

 

そしてスタッフも
彼がなぜそうなるのか、深くわかろうともせず、
こういう行動を「問題行動」と言っては、彼に注意したり、
危険防止の対応をしていました。

 

彼は、「あー」などの単純な発声以外は言葉が話せません。
でも本当はこう言いたかったんだ。

 

「叱らないでほしい」
「自分なんか・・・・」
そう感じて彼は、さらに不安になっていたんだ。
構造化,フレームワーク,行動障害

空間の構造化〜一つのスペースは一つの目的で

 

そこで、
彼の気持ちや、感じ方をしっかり理解した上で
「構造化」のフレームワークを使って、
彼の不安を取り除いてあげる支援を始めた。

 

すると、
不安からくる反応や行動がグンと減りました。

 

何をしたか。

 

各空間を仕切って、
ここは食事をする場所、
ここは休息する場所、
ここは勉強する場所と
一つの空間は一つの目的にした。

 

これは
「空間の構造化」です。

 

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作業時間の中休み。
「じゃあ、今から休憩しましょう。」

 

これまではこう声掛けしても、
彼は、
どこで、どんなふうに休憩したらいいかわからなくて、
作業卓の椅子に座ったまま緊張してカチコチになっていた。

 

「休憩をする場所」をはっきり区切ったことで
「ここで過ごしていいんだね」
彼は、その場所に行って
好きなコミックを読んですごせるようになりました。

 

時間とスケジュールの構造化と見える化

 

また、
時間の使い方やスケジュールも細かく分解し、
一つの区切りの時間にすることは、一つのことにしました。

 

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さらに、彼は言葉の意味がわからなくても、
絵や写真を指差すとわかってくれることが多いので、
言葉だけで言うのではなく、
絵カードや
シンボルなど、
彼にとってわかりやすい、
理解できる工夫をして彼に伝えました。

 

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マジックテープでくっつけられる絵カードは、
一つのことができたら、壁からはがして箱に入れ、
次のスケジュールが描かれた絵カードを取り出して
壁に貼る。

 

これは

 

「時間の構造化」
「スケジュールの構造化」
「すべきことの「見える化」」

 

です。

 

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構造化を取り入れることで、バラバラの点がつながる

 

こうして、
彼が、見通しをもって、安心して行動ができるよう、
いろいろな要素を一度分解して
彼にわかりやすいように再構成しました。

 

 

 

そのままでは
点と点がつながっていないから
わけがわからなくなっていた。

 

それを
一つ一つの点を単純に分解して、
そして単純な点を再びつなげながら
1シーン1点でできるように
支援していったわけです。

 

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何回も、試行錯誤しては改善し、
根気よく続けました。

 

そうすると、いつしか彼は
パニックや大声が驚くほど少なくなり、
安心して穏やかに過ごせるようになってきました。

 

彼は、自分から、絵カードのマジックテープを剥がして
新しい絵カードを貼るなど
スケジュールの管理も自分でできるようになり、
集中して作業に取り組めるようになりました。

 

彼の表情を見ると、
毎日、作業所に楽しく通っている様子です。

 

ビジネスやライティングにも使える「構造化」のフレームワーク

 

この特殊な支援方法でもある「構造化」のフレームワークは、
私達の日常生活や家庭生活にも応用できます。

 

さらに、
仕事や在宅ビジネスでのシステム構築、
ライティングでの応用、
さらには、経営やマネジメントのコンサルタントとしても
十分応用工夫できます。

 

なぜなら、

 

「構造化」とは
作業所のスペースを区切ったり
買い物を頼むときに「トマトを買ってきて」とシンプルに言うことだけではなく、

 

いかようにも応用でき、当てはめることのできる
「考え方(フレームワーク)」だからです

 

「構造化」のフレームワークとは

 

それでは
これまでに事例にあげた「構造化」の考え方を、まとめてみましょう。

 

「構造化」とは
複雑なことを細かく分解し、簡単にする一連の考え方です。

 

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そのためのポイントは3つあります。

 

物事の構成要素を見つけ出す。(構造の分析)

 

構成要素ごとに分解し、簡略化する。(要素の抽出・簡略化)

 

みんなにわかりやすく、やりやすく組み立てる(することの「見える化」)

 

物事の構成要素を見つけ出す。(構造の分析)

 

一見複雑で難しいことは、
いっぺんに理解しようとするから訳がわからないのです。

 

私達の頭は、
複雑なことをいっぺんに理解できるようにはなっていない。
それができるのはアインシュタインかお釈迦様くらいでしょう。

 

たとえば、
学校時代、難しい数学の方程式の問題を解くとき、どうでしたか?
代入したり、括弧を外したり、いろいろして
簡単な数式に分解しませんでしたか?

 

そうしたら、とても簡単になりましたね。

 

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料理はどうですか?
5時間煮込んだカレー。
おいしいですね。
どうして作るんでしょう。

 

野菜や肉を準備する、
切る
下ごしらえをする、
煮込む、
味付けをする
など、レシピに沿って手順ごとに構成要素があります。
オリジナルレシピを自分で作るときも
この構成要素を、
自分なりに並べ変えたり加工したりします。

 

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ライティングの例では・・・
これも要素がいっぱいありますね。
題材を見つける、
自分で感じ考える
何を書こうか構想する
構成を考える
表現を考える
タイピングする、またはペンで書く。
校正する
公表する

 

このように、

 

その事柄がどんな構造になっているのか(構成要素)を見つけ出します

 

構成要素ごとに分解し、簡略化する。(要素の抽出・簡略化)

 

そして構成要素を見つけ出したら、
構成要素ごとに分解し、それを簡単にします。

 

非常に複雑なものなら、
モジュールごとに取り出すという考え方もありです。

 

つまり、
見出した構成要素を
カテゴリーに分けて整理し、そのカテゴリー内でまた取り出すのです。

 

取り出したものは、一部品につき1事項です。
何個も盛り込んではいけません。

 

「〇〇スーパーに行く」
「トマトを買いに行く」

 

具体的に、
わかりやすく
簡単明瞭にします。

 

 

 

みんなにわかりやすく、やりやすく組み立てる(することの「見える化」)

 

そして、
「一つに付き一つ」で取り出された構成要素を
誰にもわかるように、やりやすいように組み立てます。

 

例えば、文字や言葉ではわからない人に、絵カードで提示した例、
絵カードにマジックテープをつけて、終わったスケジュールは剥がして箱に入れる、
次のスケジュールを貼るという例のように

 

することを、「見える化」して
組み立てるのです。

 

構造化をすることの絶大な効果

 

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この3つのポイントを押さえたら、
今まで複雑だったことも、驚くほどわかりやすくなり、
ステップや手順も明らかになってきます。

 

これが明らかになったら
「こういうふうにしたら、やりやすいだろう」という仮説が立てられます。

 

この仮説に沿って
実行する。

 

そして、その実行の結果が見えたら、
仮説を検証し、微調整したり修正したりします。

 

こうして仮説の精度は上がっていき
再構築されたものは

 

具体的にステップでできるように、手順化され、
みんなができるように、標準化され、
そして、マニュアル化される様になるわけです。

 

 

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このように
「構造化」は、福祉現場だけではなく、何にも使える「考え方」であり、
フレームワークです。

 

だから、
身近な例では、日々の子育てや家庭の家族関係にも使えるし、
法人の経営コンサルなどの専門分野でも効力を発揮するでしょう。

 

構造化については
これだけでも語りきれません。

 

また詳しい記事を投稿しますが、
メルマガでも、
あなたのビジネスや、ライティング活動に
具体的に役立つ情報をお伝えします。


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