行動の基準と指針を決める3つの着眼点〜マインド第2話

行動基準,指針,航海,マインド,

地上の道路は目に見えますが、
広い海で船はどうして目的地に向かっているのでしょうか?

 

そのために、船乗りは、
幾通りもの測定方法や計算方法を駆使して針路を決めます。

 

これは、人生や事業においても同じ。
今回はその中でも最も基礎となる、
「基準方位」のお話をします。

 

 

広い海の航海術から学ぶもの

 

道路も標識もなにもない、広い大海原を航海するとき、
どのようにするのでしょうか?

 

 

行動基準,指針,航海,マインド,
まず知らなければならないことが、
自分がどこにいるかということ。

 

 

そしてもう一つ知らなければならないことが
どこに向かうか(目標地点)ということ

 

 

そしてその2つを知って、海図にコースを記入する。

 

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そのために
船乗りは複数の測定方法と計算方法を持っています。

 

例えば、レーダー、衛星航法、灯台の方位、
星の高度、慣性航法など。

 

船乗りは
これらの測定と思考を駆使して、
船を正確に進めるわけです。

 

 

なぜ複数の方法を持たなければならないかというと、

 

自然条件、環境条件などが地上よりも遥かに目まぐるしく変化する海上では
いろいろな方法が使えなくなるからです。

 

いろいろな方法から得る値を評価して、
客観的な判断ができなければ、
船は正確に進めないからです。

 

 

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だから船乗りは、複数の手段で状況を機敏に判断し、
目的地と、自分の正確な位置を
一刻一刻チェックし、

 

目的地点への残航程から針路・速力を保ち続けているのです。
これは、船のみならず、飛行機も同じです。

 

私は航海学生時代、そして若手航海士時代、航路計算には細心の注意をはらい、
船の進行を守ってきました。

 

この考え方は、
人生においても、
またビジネスにおいても、

 

幸福という目的地に向かうために超絶な力を発揮します。

 

しかし、
自分の位置と
目標地点の位置
これだけでは、船は進めないのです。

 

それらの大前提となる大切なことを知らなければ、
船を出港させることはできません。

 

何もない大海原を行くための智慧

 

広い海を航海するとき、
船乗りは様々な航法で針路を計算します。

 

しかし、どのような航法にせよ

 

基本は
目的地を定める
自分の位置を知る
ということです。

 

これを知るために、複数の手段と計算方法(思考)を持ちます。

 

人生の旅路でも
自分の今の位置と、目標地点を見失わないようにしていくこと
それが大切なんだなと気づかされます。

 

 

目標を定める。
そして
それに向かう道筋での自分の位置を知る。
しかも複数の手段で知る。

 

それがたえずできていることで、今進むべき針路と速力が決まる。

 

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しかし、その大前提となる一つのことがあります。

 

それは、

 

基準となる方位を知る(北の方位を基準にする)ということです。

 

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基準となる方位を、正確に狂いなく、たえず把握していないと、
自分の位置も、目的地の方角すら、危うくなるのです。

 

だから船乗りは
正確な計器(航海計器)を使い
基準となる方角(北半球では「北」の方角)を正確に知る必要があります。

 

基準方位(北半球なら「真北」)を知ることは
何よりも最初に重要なのです。

 

この、基準方位というものは
人生やビジネスにおいては、「指針」や「指標」に当たると私は考えています。

 

 

そして
その基準方位をいつも正確に把握するために、
チェックを怠らないこと。
それが大切ではないかと思うわけです。

 

今回の記事では、

 

あなたが、人生という海をイメージ豊かに航海するために、
基準方位を知るための着眼点について触れてみたいと思います。

 

基準方位を定める方法とは

地球ゴマの不思議

 

地球ゴマって知ってますか?
丸いフレームの中に、円盤があって
その円盤を回します。
コマの軸は、その円盤に直接くっついているのではなく、
円盤を支えているフレームにくっついています。

 

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この地球ゴマを回したら、
コマはある一定の姿勢を保ちます。
糸の上や、鉛筆の上に軸を置いていろいろ動かしてみても
コマは一定の姿勢になろうとします。

 

直立ではなく、鉛直線から23.4度傾いた姿勢に戻ろうとするのです。
23.4度とは
地球の地軸の傾きです。
地球が23.4度傾きながら自転して回っているから、
地球ゴマも、中の円盤が回る限り、地球と同じ姿勢を保つのです。

 

私は子供のころ、よく地球ゴマで遊びました。
面白い科学のおもちゃでした。

 

大人になって、
船に乗り込みました。
そこでまた地球ゴマにお世話になるとは予測もしていませんでした。

 

ジャイロコンパスとは

この地球ゴマを
航海の世界に応用したものが
「ジャイロコンパス」です。

 

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ジャイロコンパスの中には
電力で高速に回転する運動体があり、
その運動体が一定の姿勢を保つ性質を利用して
北の方向(「真北」)を指し示します。

 

ジャイロコンパスの示す方向は、磁気コンパスよりも正確です。

 

なぜ、こういうことが起こるのかというと、
地球が鉛直面から23.4度の傾きをもって、猛スピードで回転しており
私たちもその大きな回転体の上に位置しているので

 

地球という回転体の上で回転する小さな回転体は
回転している限り、
地球と同じ姿勢を保ち続けるような作用が働くということです。

 

この作用は、北極や南極の極点を除いて、地球上のどこにいても働きます。

 

 

この原理は
回転運動とベクトルの数式から説明されるのですが
ここではお話するテーマではないので省略します。

 

 

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・・・・水中でも、この原理は働きます。

 

だから
潜水艦なんか水中にいたら、
レーダーも使えないし、灯台の方位も計れないけれど
このジャイロコンパスを大いに役立てるわけです。

 

「真北」の基準方位を把握する意味とは

このように、
船乗りにとって、目的地がどこにあるのか、自分がどこにいるのか、
そのための航路はどの様にとればいいか?
こうしたことすべてについて、

 

基準となる方位をしっかり把握しておく必要があります。
これが把握できないと、
航海術のすべてが狂ってくるわけです。

 

だから
船乗りは決まった時間に何回も「ジャイロチェック」を行い、
ジャイロが正常に動いているか、
正しい方位を差し示しているかをチェックするわけです。

 

 

これは、
人生や、ビジネスや学問などの何かの行動でも
当てはめることができます。

 

 

基準となる「真北」の方位。
これは、
自分にとっての指針であり、行動の基準となるものでしょう。
それは人それぞれ、百人百様ですが、

 

大切なのは
「私の指針」をたえず把握していることです。

 

「私の指針」は、
「なぜ、それをするのか」という問いから始まります。
「ではなぜ」
「ではでは、それはなぜ?」

 

この「なぜ」を突き詰めていったら
これ以上問うことのできない「なぜ」にぶち当たる。

 

これが「私の人生のビッグWhy」
です。
この考え方は、前回の第1話の記事に書いたとおりです。

 

 

 

この「ビッグWhy」から導き出されたもの
その「なぜ」のために、私はどんな行動をすればいいか?

 

 

これが
「私の指針」になるわけです。

 

この「私の指針」は、
航海術に言うところの「基準方位」に相当します。

 

 

 

 

この「指針」をいつもチェックすることで
私の行動は、ブレなくなります。

 

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磁気コンパスの話

 

ただ、ジャイロコンパスの弱点は・・・・
ジャイロコンパスは電気で動きます。
しかも、
回転がぶれなく一定になる(「回転整定」といいます)まで
何時間もかかります。

 

だから、
電力の供給が断たれた時、
船乗りはもう一つの手段で基準となる方位を計らなければなりません。
それは
磁気コンパスです。

 

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よく、市販されているN極とS極のある針で方向を計るコンパスです。

 

 

船に備え付けている磁気コンパスは、
市販ものと違い、
コンパス盤面が船の動揺があっても水平を保てる工夫や、
コンパス盤の左右に配置された自差修正装置など、
いろいろな工夫が施されており
もっとしっかりした構造になっています。

 

 

 

ただ、磁気コンパスを使うには注意が必要なのです。

 

磁気コンパスで示される「北」は本当の「北」ではないのです。

 

コンパスの針は、北極付近の地球のN極に向きますが
このN極は、わずかに地軸とずれています。
だから正確には、「真北」と区別して「磁北」と言います。

 

磁気コンパスの誤差を修正する

 

本当の「北」ではない「磁北」からは、
その磁極と地軸のずれを修正しなければなりません。

 

磁極と地軸のずれを「偏差(ヴァリエーション)」と言いますが、

 

その偏差は、船のいる海域でも違うし、
偏差の量は年によって変化します。

 

 

だから、海図には、その海域での偏差と、そこでの経年変化が書かれています。

 

船乗りは、磁気コンパスを使うとき、こうした誤差を修正しなければならないのです。

 

 

しかし、誤差はそれだけではありません。
地球の地磁気それ自体が、実際の地軸とずれている誤差が「偏差」なら、
自分の船それ自体の持つ誤差というものもあります。

 

船はたいがい、鉄がいっぱいあります。たとえ木造船でも例外ありません。
だから船は、その船特有の磁気を帯びています。
その磁気がコンパスに与える影響を考えなければなりません。
この誤差を「自差(デヴィエーション)」と言います。

 

 

 

「自差」もまた、船それぞれでまちまちで、

 

面白いことに、
北半球で建造された船と、
南半球で建造された船の自差の傾向が
正反対だったり、

 

その時々によって「自差」が変わるから、
ドックに入ったときなど、
定期的に「自差測定」をしなければなりません。

 

こうして
マグネットコンパスの指し示す方向に
「偏差」と「自差」の修正をして
正確な基準方位を把握できます。

 

船乗りは、いっぱい計算しなければならないので
算数が自然に得意になるんですよ(笑)

 

磁気コンパスは
船乗りにいっぱい計算をさせてくれます。
そういう意味でも、私は好きです。

 

 

コンパスの話から得られる生き方の気づき

 

磁気コンパスもまた、ジャイロコンパスと同じく、
地球の性質を利用して、正確な方位を知るもためのものですが、

 

磁気コンパスの特徴は
二つの誤差を把握して修正しなければならないということでしたね。
実に面倒だとお感じになられたでしょう。

 

場の特徴を考える

地球上の位置によって変わる「偏差」
これは
私たちの日常生活に当てはめて考えるなら
私たちが活動するところの「場」の特性とか、傾向ではないでしょうか。

 

 

日常生活においても、
そこの場所の種類や、そこに集まる人などに応じて
興味の幅や感性にも変化があるし、
また、時代や世代で経年変化もする。

 

私たちが
何事をするにしても考えなければならないのは、

 

その「場」の特性がどういうものなのかを考え、


そこで自分の取るべきポジションやスタンスを決定していく。

 

こういう配慮が
磁気コンパスにおける「偏差」の把握と修正ではないかなと思ったわけです。

 

自分の特性を知る

 

また一方
「自差」は自分特有の性質
「自分を知る」ということであり、

 

これも、自分の経験や成長によって変わってきます。

 

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「自分を知る」ことによって
その場で自分がどんな行動をしていくのかを考えることができます。

 

 

だから、その「場」の特徴を知って、自分がどのような配慮をするのか考え、
そして、
自分の傾向や性質はどのようなものであるかをよく認識したうえで

 

意図的に事に臨むと、
大海原のような暮らしの中でも、
ぶれることなく進める

 

行動基準,指針,航海,マインド,
そういう真理を、
コンパスの原理から気づくことができるのではないかと考えました。

 

この記事のまとめ

 

 

 

広い海原で、船乗りは3つの着眼点をたえず研ぎ澄ましている。それは @基準となる方角を知ること A目的地を定めること B自分の位置を知ること

 

そのために船乗りは、何通りもの測定方法や計算方法を持っており、状況に応じて複数使いながら、正確に船を動かしている。

 

基準となる方角を知るために、主に使っているのは、地球ゴマの原理で動くジャイロコンパスと、磁石の原理の磁気コンパスである。

 

ジャイロコンパスは、電気がないと動かない上に、起動してから安定するまでに数時間かかる。その点磁気コンパスはいつでも使えるが、地軸と磁極のズレによる誤差(偏差)や、自船自体の磁気による誤差(自差)をたえず測定し、修正しなければならない。

 

こうした
船乗りの海の上での話を受けて、
人生やビジネス、学問での着眼点が見いだされます。

 

この記事でいちばん伝えたいことです。

 

私達も、ライティングや仕事など日々の活動の中で、3つのことを意識することで、結果に確実に向かうことができる。@ 基準となる指針を持つ A 目標を定める B 自分の位置をチェックする 今回の記事では@ 基準となる指針を持つ ということを伝えた。

 

基準となる指針は、人によって様々。まず、「なぜそれをするのか?」の「なぜ」から始めて、「それでは、なぜ?」を重ねて「なぜ」の質を高めていくところに、自分の基準となる指針を見つけ出す。このことは、前回の記事で伝えた「人生のビッグWhy」のお話を参照にしてほしい。https://sigehiro.net/mind/mind-coaching1.html

 

毎日の行動の中で、自分の指針がぶれていないかチェックする。

 

一つは、地軸と磁極のズレによる誤差(偏差)と同じく、自分の活動する場に応じて、ズレが生じないようにチェックする。その「場」の特性がどういうものなのかを考え、そこで自分の取るべきポジションやスタンスを決めていく。

 

もう一つは、船自体の磁気による誤差(自差)と同じく、自分の傾向や性質をよく知り、時に応じて行動を意識していくこと。(自分を知る)

 

このようなお話をしました。

 

航海の経験から学んだことは実に多く、
現在も、研修などで講義する際に、受講者のみんなにお話しています。

 

次回の記事も楽しみにしてください。


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